(41)セカンド・インプレッション
また会おうな。
と帰り際に言ってくれた人の事はいつまでも忘れないものです。私は20年も前の、そんなシーンを覚えています。
私の行きつけのトレーニング室では、もっと簡単に「またおいでね〜」とゴツイコワモテの先輩の笑顔があります。でもこれが心から救われるのです。
私は長い間営業の仕事をしていますが、ある大手では商談を終えた後に、いつもエレベーター前まで送りに来てくれます。
「今日はありがとうございました」とお辞儀をしながら、エレベーターのドアが閉まります。閉まってしまう0.2秒くらい前に、その担当者がいなくなってしまうことがあります。ちょっと残念な気持ちになります。
ある女性営業マンが我が社へやってきました。彼女の話す言葉は明晰で、学歴や会社の看板は素晴らしく凄い美人です。長い会話の途中で、彼女の手がバッグのストラップにかかっていました。帰ろう帰ろうとしています。それから数十分の話が続きます。
長居しているわりには何故か「なごり惜しさ」がありません。彼女が帰った後には、なぜか疲れたスタッフが残っていました。
なごり惜しさ・・・これは人間関係だけでなく、ビジネスにも大事なことだと思います。
歌舞伎を見たことがある方はお分かりだと思いますが、緞帳(どんちょう)といわれる最後に降りる幕の降り方が粋なのです。サーッと途中まで降りて、それからゆっくりゆっくり降りるのです。なぜかなごり惜しいのです。「えっ。終わらないで!」という気持ちになります。
あるお客様のプロジェクトの打ち合わせで、遅れてきたある営業マンが「遅れて申し訳ございません」と汗を拭き拭きお詫びをしてました。かなり走ってきたのでしょう。汗が止まりません。夏の暑いなか、スーツに身をくるんいて汗だくです。
打ち合わせが終わって、皆が椅子を立とうかという時に、ふたたび「今日は遅れて申し訳ございませんでした」と、もう誰も忘れていたことを言った彼が、とてもカッコ良かったです。その一瞬、皆の心を奪いました。
私はなぜかその瞬間が忘れられないのです。
普通、人はファーストインプレッションに最大限の力を注ぎます。これは大事なことだと思いますが、セカンドインプレッションも大事なんだと。
スナックやクラブでは、一人で来店すると色んな人間模様があります。いろんなことに疲れた人もやってくる面白い世界です。カラオケを歌っても、バカ騒ぎしても、最後に一人でお店を出る時に見送ってくれる女性は、天使に見えたりします。
おおかた酒飲みは寂しいのです。そしてそんなお店の女性のお見送りがウレシイ。帰り際が一番大事なのです。お店の80%の仕事は、その見送りにあると私は思っています。
私たち通販をやっている人間もここは大事なところです。いくらホームページで綺麗に表現していても、実際にお客様が梱包を開いてる途中から、笑顔がでるかどうか。ここが大事だと思っています。
ですから特に梱包には細心の注意が必要です。それは商品を見ていただき、使っていただき、喜んでいただこうという、素直で謙虚な心が現れるところのように思います。
せっかくのファーストインプレッションを裏切っていないか。その意味で、私はセカンドインプレッションのキーは「誠実」にあると思っています。
身近にいませんか、セカンドインプレッションに魅力がある人が。私の廻りにはトレーニング室をはじめ口数が少ない人に、そんな人がなぜか多いのです。近づきにくい無愛想な人でも、こちらから話題をもって話しかけると、素晴らしい人であることが本当に多いのです。
このことは、私は毎週旅をして廻っていますので、どこも同じなんだなあと思っています。東京も福岡も札幌も大阪も一緒です。当たり前ですね、同じ人間の話なのですから。
見かけが無愛想でも、話してみたら素晴らしい人というのは多いです。しかし、私はそのギャップを見つけることが面白いと思っています。男も女もそのギャップがないと面白くないし、カッコ良くないでしょう。
欧米的に何でも表に出して表現するのも大事ですが、意外性、ギャップは静かに誰もがもっていると思います。それを見つけるのが楽しいのです。
人は見かけによらないと言いますが、むしろ、人は見かけよりも良いことが多いと思います。このことは世の中の暗いマスコミニュースとは全く違います。マスコミが伝える暗い事件を背景にした猜疑心たっぷりの話を毎日聞いていると、洗脳されそうです。
私は、行動とは人に会うことだと思っています。そしてたくさんの人に会えば会うほど、そんなに悪い人はいないことがわかります。行動力がなくなると新聞やテレビ、インターネットの情報だけに振り回されるのは当然でしょう。
見るべきなのは、今現在の自分の目の前の人たちです。人を疑ったり、物騒な世の中だと嘆いてばかりでは、案外、この目の前の人たちが見えてこないものです。もしかすると、セカンドインプレッションとは受け身になって観るのではなく、自分から行動してしか観れないものなのかもしれません。
いいセカンドインプレッションから感じるものは、誠実さ、平和、愛といったイメージです。
好きでない相手のセカンドインプレッションを観るために、自分から挨拶をして話しかけてみるというのは自分が成長している証だともいえます。ですので、実力がある人ほど頭が低くなるのは、自然な事かもしれません。
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