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福山克義がつづる
汗と涙と笑いのモノつくりコラム

(14)価格を決めるのはお客様

私が作っている「次世代オモリROCK」は、他のオモリと比べると値段が高いのです。一般的な天秤オモリは1個200円ちょっとですが、ROCKは500円します。妥協できない部分があって手間がかかっているというのが原因ですが、このROCKを高いから買わないという方がおられます。「お金がないし」というのがほとんどの理由です。

でも、残念ながらお金があってもその人は買ってくださらないでしょう。高いと感じているのは「欲しくないから」なんです。ROCKはその人にとっての価値がない、どうでもよい商品なんです。少なくとも、竿やリールやガソリン代を含めた釣りのトータルコストの中で、オモリ代の差などは微々たるもののはずですが、その微々たるものを乗り越えるだけの魅力が、ROCKにないと判断されていることは反省しなくてはなりません。でも、高いといわれるからという理由で下を向くこともないと思っています。価格に十分に見合うものであることを、これまでのお客様の評価で確信しているからです。

ただ、一度もROCKを手にされたことのない方ですと、どうしても「オモリはこのくらいの値段」という先入観があります。それは釣り人の常識ですし、マーケットの常識です。その常識よりずっと値段の高いROCKの価値を、買う前からわかってくださって、実際に買ってくださる方というのは、私にはほんとうにありがたいことです。その方のために、一所懸命作りますし、投資や改良を続けています。もちろん価格も下げ続ける努力をしています。

ではROCKをずっと安くしたら売れるかというと、これも残念ながらそんなに売上が上がることはないだろうと思っています。商品の性能が十分に理解されて、競合品がほかにもあり、値段の勝負ができる分野ならば値下げは有効ですが、ROCKのように、後にも先にも世の中にこれひとつしかないような商品は、価格と売上の相関関係はきれいなカーブを描かないのです。マクドナルドのようなわけにはいかないのですね。

価格だけでなく時間も同じで、時間があれば英語の勉強をするのになあと言っている人は、仮に時間があったとしても、なかなか英語の勉強をしようとはしないでしょう。そのうち時間がとれれば飲みに行こうという人とは、一生飲みに行けないかもしれません。やりたければやるし、買いたければ買う。乱暴なようですが、釣りという趣味の分野ではそういう商品が多いのです。

分野はちがいますが、あるブティックでの話です。正札に5万円の服をつけて販売していたときには、あまり売れなかったのですが、20万円にしたらとたんに売れ出した。という話を聞きました。何も暴利を得ることをすすめているのはありませんで、そういった買う立場の欲求があったんですね。値段との相互作用で商品がグレードアップしたのです。

売る立場は、いつも原価積み上げ式で売価を設定しています。だから適正な価格ということになるんで正しいじゃないかといいます。しかし、これからは、価格は買う立場で設定されるようになります。アメリカがすでにそのようになっていますし、日本もそうなりつつあります。場合によっては原価割れも出てきますが、そのような製品は世の中から消えていくでしょう。

また、これからは業界適正利益というものが消滅していきます。「通常利益は30%だから」と言っていた時代はすでに過去の話です。安売りして過当競争するより「魅力」を作っていった方がどれだけ商売として成り立つか。

ここは、頭に汗をかかなければなりません。アイデア、製造方法、販売方法・・・もう「24時間働けますか?」という昔のコマーシャルのように、仕事にオン・オフはありません。起きている間中、お客様と商品のことを気にかけておくことです。頭に汗をかくことを仕事といいます。それはとても快いことなんです。快いから過労にはなりませんし、その快さは商品にも現れ、お客様にも届けられていくことになります。

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