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福山克義がつづる
汗と涙と笑いのモノつくりコラム

(32)ちょっとだけ新しいONLY ONE


私の地元である福岡市東区香椎に、1日で5000個を販売する「メロンパン屋さん」があります。

ギネスブックに載っても良いのではないかといえる凄い販売量です。単価120円。種類はプレーンの1種類のみ。建屋はどこにでもあるちょっと間借りしたような店舗に簡単なメロンパンの看板と旗のみです。長い行列は毎日で、個数だけを言えば無造作にその数量だけ袋に入れてくれるという対面販売です。計算してわかるように1日60万円。年間売上2億円以上になりますね。

メロンパンはちょっと大きめでメロンパン独特の表面サクサク、中身ふっくら柔らかで美味しいというのが特徴です。メロンパンには、チョコチップ、クリーム、レーズンなどなどいろいろな種類があるのですが、あえて1種類で勝負したこのパン屋さんに拍手です。



実は大阪にも車でメロンパンを販売している移動パン屋さんがあり、ここはなんと、車に取り付けられたオーブンで焼き上げ、目の前で出来あがったホカホカのパンを買えるのです。たかがメロンパン。されどメロンパンを魅力ある形にしたすばらしい商売です。ここは15年くらいやっているのですが、今も行列ができてしまいます。そりゃあそうだぁ。焼きたてメロンパンは私も食べたいです!

東京でもメロンパンは、最近はちょっとイメージが違ってきています。それは、有名なフランス人シェフのルノートル氏の関わる渋谷西武店のベーカリー「ルノートル」という高級ベーカリーが扱い始めたこと。今までは本当に庶民の食べ物だったのに、ちょっと高級で美味しいものとして様変わりしています。

ほかに、これまた地元の博多駅構内にクロワッサンだけを売る店があります。ここは3種類のクロワッサンですが、私が知っているだけでも10年間くらい行列が並んでいるのです。数えるのが面倒なのでグラム売りです。私もいつもならんでプレーンのクロワッサンを良く買います。ここの売りは博多駅全体を包む焼きたてパンの香ばしい香りです。あれは反則と思われるくらいについつい引き寄せられるのです。マルキュー顔負けの立派な集魚材です(^^)。香りに弱い私は、サビキで釣られてしまいます。

余談ですが香りで勝負といえば、昔「キッコーマン」のセールスマンが世界各地のスーパー前で露天の料理実演をし、醤油の照り焼きの香りで客を引きつけた売り方も凄いですよね。アメリカではこれがきっかけで高級レストランにも「Teriyaki」ってありますからね。そして、アメリカでは醤油のことをソイソースと言わないでキッコーマンって言いますしね。しかしこれは番外のナンバーワンです。

メロンパンやクロワッサンなんて昔からあった商品を、ちょっとした変化でオンリーワンにしてしまったこのビジネスをどう思われるでしょうか?お客様は「これは新しい!」と感じておひねりを出しています。ちょっとした進化なのです。「私には世の中にない新規の商品なんてできない」とは言ってはいけない時代なのですね。本当にもったいない話です。

さてさて、もう一つ海外からのプレステージブランドに真っ向から立ち向かった、最初は名前が全く売れていなかった大阪の企業を紹介します。『本当の価値を持つもの』を求めて立ち上がった革製品問屋として、NHKで紹介されていたモルフォという会社があります。

ここの職人としてのクラフツマンは、日本にしかない菊寄せの技術で海外ブランドと立ち向かっています。アールを取った角を薄いなめし革を少しずつ寄せて綺麗に仕上げる技術です。また、なめし革を0.02mmの薄さまで削る技術なんていう職人の技術を見ても感動します。ひとつのものにこだわり、常につくり手としての美意識をこめた商品は誰だって心が揺さぶられます。ここには高いけど欲しい商品が確かにあります。http://www.cypris.co.jp/

モルフォは実際は業態は問屋なのですが、私からみると良い情報だけを提案できる立派なメーカーです。プロフェッショナル軍団です。逆に「私達はメーカー」と言っているところで実は「下請け」をしていて「景気が悪い」と言っている企業が多いのです。あなたの会社は「下請け」になっていませんか?それとも単なる「問屋」や「代理店」になっていませんか?

モルフォについてあと一つ。NECはカード型カメラ付携帯電話を開発して、幅85mm×奥行き54mm×厚さ8.6mm、重量は約70g と、デジタルカメラ搭載機とは思えないほど薄型かつ軽量なものとなってリリースしましたが、このモルフォ社長の小澤社長は、すでに他社からこの革製のカバーが作られているにもかかわらず、このカメラの商品コンセプトをしっかり理解して、ファッションとして首からぶら下げて見せるカメラとして革カバー製品で演出しました。ミーハーかもしれませんが、これは私もカッコイイと思います。カッコイイとは「期待を裏切る意外性」と私は思っていますが、まさしくその通りでした。

「メロンパン屋さん」をヒントに商品戦略にアンテナを広げてみると世の中が変わって見えるかもしれません。シャーロック・ホームズが五感を研ぎ澄ませて「見る」ことをやめて「観る」ことにしよう。と言っていますが、これって必ずやその時代におけるセンスを磨くことになると思います。そうして新たな発見と新たな感動でこの時代をもっと楽しみませんか?

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