(34)お客様を選ぶ時代
誰に売るかという顧客を設定することはとても大事なことであると思います。商売なのに横柄だと思われるかもしれませんが、この解釈はお客を選定することによって感動やサービスの付加価値を大きく上げることにあります。
限られたお客様により良いサービスをすることこそ、本物のサービスだと思うのです。その限られたお客様の範囲を決めるのは売り手側の好き嫌いでしか決められません。お客を博愛してしまうと決して良いサービスは生まれてこないのです。
例えば、安売りをしたとします。安いというのは良いサービスをするための資本が無いということになります。それでも良いというお客様もいます。いや良いサービスを求めるというお客様もいます。
どちらかを選ぶという権利は売り手にしかありませんし、それは売り手が決心しなくてはいけないことでもあります。この決心をしない売り手が多いのも事実で結果は魅力のないマスを相手にした商売をしてしまいます。
私は価値が高いものや良いサービスができる方が好きですので、お客様もそういったお客様しか集まりません。私が努力すべきは「価値つくり」であり、その顧客から大切にされ価格を決める権利がありますので、自然に収益もでてきます。またその価値というのは、取引先や釣具店ではなく実際に道具を使ってくださる釣り人のことをいつも考えるべきだと思っています。
その釣り人の中でもどのような人たちに売るのかを決めることが一番良いサービスができると思っています。今まで右肩上がりの時代には考えなくてよかったことですね。
深い緑色を基調にした大人がくつろげるバーガーカフェをコンセプトに、アーリーアメリカン調の「フレッシュネスバーガー」は、そのことをはっきり認識しているので、顧客層も大人に絞られています。子供は入りにくいのです。またマクドナルドのように量を売って売り上げを作ることはしません。
船に乗る人だったら誰でも知っているカールツァイスの望遠鏡のレンズを、ソニーはデジカメやビデオカメラに使い価値を上げています。明るさがダントツに素晴らしいこのレンズを知っている私は、それだけでシビレてしまいます。このようにカールツァイスを知る人に口コミしてほしいはずです。
私がお土産で良く買う「東京ばな奈」は、東京だけに売る場所を限定しています。この株式会社グレープストーンという会社は、羽田と成田空港やJRの東京駅周辺のみなどでしか買えないようにしています。
実は売る場所の限定だけでなく、顧客を限定しているということです。旅をする人という顧客だけに限定してます。その旅人は全国に口コミ営業してますから凄い話しです。
ルイビトンはこのことをハッキリ明言しています。田舎では売れないから売らないのではなく、都会の顧客にしか売りたくないのです。仮に郊外で売れたとしても、ブランドは間違いなく色あせるから絶対に売りません。売ったら最後ルイビトンは地に堕ちます。
先述のリッツ・カールトンホテルはこう書いてお客様を選んでいます。
"We Are Ladies and Gentlemen Serving Ladies and Gentlemen"
紳士淑女をおもてなしする私達も紳士淑女です。言葉は柔らかいですが、怖いほどお客を限定していますね。でも紳士淑女になりたいお客様はこれが嬉しいのです。技有りですね。
スーパー成城石井も「こういう顧客に愛され支持されたい」と、顧客を明快に定めるからこそ商品・サービスが研ぎ澄まされていて、顧客はそのことに満足しています。
スーパー成城石井のアトレ恵比寿店は、有名な恵比寿ガーデンプレイスが近くにあり、扱っている商品が違います。よって顧客層が全く違うのです。そういった顧客は見てすぐにわかります。とんでもなく高いワインをカゴにサッと入れてしまうあの顧客を選んでいるのは、実はお店側なのです。
たとえ安売りのダイエー、庶民的なイトーヨーカドーなどの大型店が進出してきても、全く影響されないのです。同じくお客様は決して安物だけを求めていないと仮説を立てた紀伊国屋や三浦屋は、これから先もこの路線は外さないだろうと思います。高齢化している社会では、良いものを少し食べたいという市場はますます大きくなるでしょう。
私の地元の「岩田屋」という老舗のデパート経営が傾いた理由は、お客を限定してこなかったからです。老舗で高級なのに特売セールの赤紙を貼ってしまうという商売をしてしまったから、今まで一番大切だったお客様が逃げてしまったのです。貴方の街にもそんなお店ありませんか?
Gear-Labは研究開発型のショッピングモールであり、良いものを作りたいという意識は非常に強いです。価値のないものはいかなる努力をしてもやがて消え去っていきます。これは自然の掟です。
しかし、「良いものを作れば必ず売れる」という発言をするメーカーは顧客のことを知らない場合が多いのです。良い商品を提供しようという姿勢のなかで、顧客を知り顧客を選ぶ。その顧客から見ると良い商品はますます魅力的になります。これこそ客観的な見地からみた商売のあり方だと思います。
Gear-Labは全国のモノづくりにチャレンジしている姿に共鳴してくれるお客様に愛されたいと思っています。もちろんその他のお客様を遠ざける事はいたしません。ただ顧客から見て作り手の気持ちが少しでも分かったら、これはお客でありながらも嬉しいことです。モノだけではなく心が入った商品を提供するために、私達はそのことを表現する努力をず続けなければなりません。
お客様は選びましょう。そしてそのお客様に最高に良い商品とサービスで、とことん喜んでもらいましょう。
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