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福山克義がつづる
汗と涙と笑いのモノつくりコラム

(36)キャッシュフローとリスクマネージメント


 告白すると、私は財務諸表の数字を見るのが苦手です。経営者対象のいろいろな研修会に出席してみると、私みたいに数字が苦手な経営者が多いのに驚きます。でも、この数字については最低限の理解がないとうまく運営できません。そこで簡単に、どうしても把握しておかなくてはならないポイントをまとめてみましょう。

一番大切なのは現金残高です。手持ちの現金に入金したお金を足して、出金を差し引くと手元の残金がわかりますが、実際の商売では少し難しいことが起こります。

昔から「勘定合って銭足らず」という言葉で伝えられていますが、バブルがはじけてから、ますますビジネスマンの話言葉にキャッシュフローという言葉が多くでてくるようになりました。自分のお小遣いをキャッシュフローと言っている人もいます(^^)。

財務諸表を確かに見ていないと資金繰りは厳しくなってしまいます。損益計算書(P/L)では儲かっているはずなのに、なんでこんなに現金が少ないんだろうと悩む企業や個人商店は多いと思います。

この原因を作っているのは売掛金が多かったり、その逆に在庫が増えるわりには買掛金が少なかったり、また受取手形が多かったりする場合などです。また販売額の割に在庫が多すぎて在庫が回転せず、ちょうど使えないタンス預金と同じような状態が起きていることもあります。

在庫が増えると試算表は利益として計上されます。この現象がひどくなると、悪ければ黒字倒産ってこともありうるわけです。逆に利益があまりでていなくても、キャッシュさえちゃんとあれば資金繰りが悪化することはありません。

一般的には損益計算書は理解できても貸借対照表(B/S)を見るのが苦手な人が多いようです。B/Sを見るポイントとして一番大切なのも、現金や預金の残高です。これが少ないのが一番危ない状況なのです。経営の規模にかかわらず、ここだけはしっかり押さえて動けば問題ありません。簡単ですね。

弱者は売掛金を多くつくらないのがいいのです。売り掛けサイトを長くする受取手形などは論外。弱者は差別化した商品やサービスがあれば「すみません。うちは小さいから現金でないとお取引できないんですよ」と言える立場になります。

個人や零細企業が大手企業にこの言葉を言うのは快感です。だって本当なんですから仕方ありません。商売人はここで決して見栄をはって「月末締めの60日でいいですよ」なんて絶対に言ってはダメなのです。どうしても販売しなければならないときは「代引」で送る覚悟が必要です。今は手形サイトの120日は異常だという見方が正常な商売人だと思います。

この話が一番多く発生するのは大手相手の場合です。大切なのはお客様が大手だからといって、売掛金を多く作って安住してはならないということです。つまり大手への大口販売に依存してはちょっとまずいのです。

大手相手に取り引きすることのリスクを考えてみましょう。大手との取り引きでは、せっかく自社で開発した商品をもっていても、いつのまにか自分が下請け的存在になってしまったり、ちょっと売れると営業上も規制を迫られたりして身動きできなくなることが起こったりします(必ずそうなるわけではありませんが、万一起これば致命的です)。その意味でも、大口取り引きに依存せず、取り引きは分散させて、たくさんのお客様と少額取り引きをしたほうが安全なのです。弱者はBtoCに徹するべきだと私は思っています。

こういうとモノ作りが得意な職人肌の経営者は、そんな面倒くさい仕事はしたくないと大方言われます。自分は商品力で勝負するのだから、売ることで発生する多量の伝票やサービスにに振り回されたくないと考えるのです。零細企業にとってはここが大きな落とし穴になります。

実はこのような方が本当に多いと思います。商品アイデアがでる→特許取得→大きな小売販売店と販売契約→身丈に合わない忙しい製造販売開始。という簡単な地獄のシナリオを頭に描く人がやたら多いのです。

そんなに簡単にうまくいくはずがありません。仮に最初少しこのルートで売れ始めたとしても、大手相手に大きな利益をだすことはなかなかむずかしいのです。また今は、大企業もどうなるかわからない時代でもあります。最悪、大きな負債だけ残ったということだってあります。怖い話です。

お客様は多ければ多いほど良い。それも、リーテイルビジネス(一般消費者への小売)が体力のないスタート時点では一番安全ということです。小売は手間がかかる分、利益率は増します。その手間をどうやってシステムを作って省力できるかが問題になります。弱者のビジネスはここに力をそそぐべきでしょう。

キャッシュフローで同じくらい大事なのは「節約」です。決してケチるわけではなく、仕入れに関する費用の努力をしないと、お客様に適正な価格で販売した場合、利益がでなくなります。利益がでないと魅力あるサービスも商品もできなくなります。お客様と直接関係がないところはトコトン節約しましょう。

最初は机やイスは中古品で十分です。事務所は自宅兼用、倉庫兼用でもいいじゃないですか。私自身もいつも釣具の段ボールに囲まれています。これは通販で急成長をしている「やずや」という会社から学んだ大切なことです。良いオフィスや良い車、不動産で背伸びをしたりすることは、けっこう危険な行為です。

なぜならそれらは、お金を生みません。お金を生まないものは資産ではないのです。また、あなたのパートナーになってくれる銀行は、オフィスや車ではなく財務諸表とキャッシュフローにだけ興味があります。それを無意味に圧迫するようなことは、成長の妨げにしかならないでしょう。

ただし、お客様と直接関係するところ、例えば電話やFAX、そしてインターネットでの販売ならWEB環境はお金をかけてでも快適にすべきです。お客様が見ているWEBは、お金を使いプロに頼む必要もある場合もあるでしょう。以前の私とここが違うところです。ちょっと成長しました。(^^;)

弱者の経営は、総資産がどうしても小さいので、全体の数字を小さくするのは当たり前です。小さいバランスシートでいいじゃないですか。一人あたりの経常利益を安定させた方が格調高いビジネスだと思います。

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